自殺とキャッチコピー
俺は今すぐにでも死んでしまいたい。
無痛で死ねるボタンがあったら今すぐ押すだろう。
だけどそんなのはないし、痛いのは嫌だし、失敗したらとか思うと怖いので、死ねない。
いい思い出がなかったり、すぐ不安になったりで、俺の人生はダメダメだ。
でもなぜか、「この世は生きるに値する」という宮崎駿の引退インタビューのときの言葉に今日たまたま出会って、それが俺の心の中にとどまっている。
あなたには生きる価値がある、というメッセージはありふれている。でも、それはウソだ。安易過ぎる。会ったこともない「あなた」の価値を知っているわけがない、と文章にするのもバカらしくなるほどウソだ。
そして死にたくなっているやつは、「はいそうですか」と受け取るほどバカではない。
自分のことを知り尽くしているんだ。
それだったらむしろ放っておくくらいのメッセージのほうがいい。
電車内や駅構内で、「あなたのことを思っている人は、きっといるよ」などと、自殺防止を呼びかけるポスターを目にすることがある。
「だったらなんだ」といつも思う。例えば親がいたとして、思ってくれたから何になるんだ、と。むしろ、親しかいねえな、みたいなことに気づくことのほうが悲しいというか、それならまだひとりぼっちのほうが格好がつく。
そんなんじゃ全然届かないんだよ。
セックス知らずに死ぬんですか? とかのほうが絶対効果あるよ。
それかマンコそのものが写ってるだけのポスター。
寄り添いすぎ。寄り添われたらむなしくなる。
「あなた」じゃないんだ。こっちを見るな。
お前が好き勝手に楽しめば、楽しもうと思えるのに、下手に気を回してくるから、うざったいんだよ!!!ってなって死ぬんだよ。
死にたいやつは、もうこれ以上自分を見たくない。
それよりも、純粋に、楽しいこととかを見たい。
難しく考えすぎなんだ、ってことは、意外なほどわかってるはず。
でもその純粋に楽しいことがわからないから、誰かに見せてほしい、んだろう。
あなたには価値がない
ってはっきり言ってやれよ。
「あなたには価値がない、ところで、これは面白い」とか、
「あなたには価値がない、だがこの世には価値がある」とかね。
もっと希釈してやれ、あなたの量
だいたい、「あなたには価値がある」は脆いんだよな。
価値がないことはすぐにわかっちゃうし、価値を感じられないからそもそも死にたくなってるわけだし。
「この世は生きるに値する」は長く効くメッセージだ。
だって、この世はでかいから。この世はでっかい宝島で、それをすべて見るなんてちょっとやそっとじゃできないから、メッセージ自体が簡単には否定されないし、この世の嫌な側面を見たとしても、まだ全然見てない領域があるため、否定を留保できる。